株式会社PREVENT(本社:愛知県名古屋市、代表取締役:萩原悠太 以下、PREVENT)は非感染性疾患(生活習慣病)のリスクがある日本人就労層12,168人を対象とし、健康行動をもとにしたクラスターの特定を行い、その成果を国際論文として発表しました。この研究結果は、SSM – Population Health, Volume 24,2023,101539に掲載されています。

【ポイント】

  • 非感染性疾患(生活習慣病)のリスクを抱える日本人就労層の健康行動をもとにし、類似性に基づいていくつかのクラスター(グループ)を特定する研究が国際誌に掲載されました。
  • この研究では年齢、性別、健康行動パターンを考慮し、潜在クラス分析を用いて5つのクラスターを特定しました。
  • これらの発見は、一律ではなく個々の健康行動(または生活習慣)や嗜好に応じた健康づくり支援に応用できる可能性が考えられます。

【研究タイトル】
Identifying Clusters of Health Behaviors in a Japanese Working Population at Risk for Non-Communicable Diseases: A Latent Class Analysis of 12,168 Individuals (非感染性疾患(生活習慣病)のリスクがある日本人就労層における健康行動のクラスターの特定)

【研究概要】
本研究では、潜在的な健康問題を抱える非感染性疾患(生活習慣病)のリスクがある日本の就労層の行動特性を理解するため、潜在クラス分析を用いて健康行動のクラスタリングを行いました。5つの明確なクラスターが同定され、それぞれが独自の健康上の挑戦と特性を持っていることが確認されました。クラスター1は、健康的な生活習慣を持ちながらも病院訪問に消極的な人々、クラスター2は健康的な生活習慣を持つ女性、クラスター3は一般的な生活習慣を持つ人々、クラスター4は生活改善が必要な中年層、クラスター5は生活習慣病の治療を必要とする高齢者グループとして識別されました。これらの発見は、一律ではなく個々の健康行動(または生活習慣)や嗜好に応じた健康づくり支援に応用できる可能性が考えられます。例えば、病院への訪問や定期的な健康診断の重要性、生活習慣の改善、および年齢や性別に応じた特定の健康リスクへの対応が、効果的な公衆衛生戦略につながる可能性があります。

【研究内容】
1. 目的
本研究の目的は、非感染性疾患(生活習慣病)のリスクを抱える日本の就労層を対象に、健康行動のパターンを明らかにすることでした。

2. 方法
2.1 参加者
PREVENT Inc.が提供する匿名加工情報化した健康診断データを使用しました。非感染性疾患(生活習慣病)のリスクがあるが診断されていない個人を対象にしました。

2.2 人口統計的特性の測定
参加者の年齢、性別、BMIなどの基本的な人口統計情報と、特定の健康指標が収集されました。

2.3 健康関連行動の測定
国が推奨する標準アンケートを用いて、運動習慣、喫煙状況、アルコール摂取量、食習慣、ライフスタイルの改善意識、病院への訪問頻度、薬の服用習慣、血管疾患の既往歴など、健康に関連する健康行動を評価しました。

2.4 統計分析
潜在クラス分析を用いて、参加者の健康行動に基づくクラスターを特定しました。適切なモデルの選択は、統計的基準とクラスターの実用的な解釈可能性に基づいて行われました。

3. 結果
3.1 参加者の特性
本研究には合計12,168人の参加者が含まれ、参加者の大部分は男性で、女性は全体の20%を占めていました。年齢分布は40~59歳に集中しており、健康行動に関して、定期的な運動をしていない参加者が78%、健康的な食事習慣がないと答えた参加者が62%でした。また、アルコール消費は様々で、毎日飲酒する参加者が28%、めったにまたは全く飲まないと答えた参加者が38%でした。

3.2 潜在クラス分析のモデル選択
1から6のクラスを持つモデルを比較した結果、5クラスモデルが最も適切と判断されました。このモデルは、統計的適合性と実用的な解釈の可能性を考慮して選択されました。

3.3 潜在クラス分析から同定されたグループの説明
潜在クラス分析により、以下の5つのグループ(クラスター)が特定されました。

クラスター1 (2,389名)「健康的なライフスタイルを送るが病院が苦手」:
 このクラスターは運動をし、夜遅くの食事を控えるなど健康的なライフスタイルが特徴ですが、前年に病院を訪れていない人が74%と多いことが特徴でした。

クラスター2  (2,215名)「健康的な生活習慣を持つ女性」:
 喫煙しない人が95%、ほとんどまたは全く飲酒しない人が68%で、女性が99%という特徴がありました。

クラスター3 (4,395名) 「一般的な集団」:
最も参加者数が多いのがこのグループでした。比較的若く、飲酒頻度が少なく、病院訪問も少ないのが特徴でした。

クラスター4(2,098名) 「生活習慣の改善が必要な中年層」:
毎日アルコールを飲み、夜に頻繁に食事をし、喫煙者という特徴がありました。

クラスター5 (1.071名)「生活習慣病治療群」:
 50歳以上が73%と高齢者が多く、生活習慣病に関連する薬を服用している人が53%、実際に生活習慣病の既往歴がある人が30%いました。

【本研究の意義と社会への実装の方向性】

  • 個別化された介入の重要性: 本研究により、健康行動のクラスターが一様ではないということが明らかになりました。
  • 特定のリスク行動への対応: クラスター4や5のように、不健康な行動を示すグループは、アルコール消費や不適切な食生活など、特定のリスク行動に対処することの重要性を示しています。
  • テクノロジーの利用: 特に病院を敬遠する傾向のある人々や、ライフスタイルの改善を必要とする中年層に対して、遠隔医療やウェアラブルデバイスのようなテクノロジーを用いた介入が有効である可能性があります。
  • ジェンダーに基づくアプローチの必要性: 女性が多いクラスター2では、ジェンダー特有の健康問題に焦点を当てた介入が特に効果的である可能性があります。

【論文情報】
論文名:Identifying Clusters of Health Behaviors in a Japanese Working Population at Risk for Non-Communicable Diseases: A Latent Class Analysis of 12,168 Individuals
掲載誌:SSM – Population Health, Volume 24,2023,101539
著者:Takahiro Miki, Kojiro Yamamoto, Masashi Kanai, Kento Takeyama, Maki Iwatake, Yuta Hagiwara,
DOI:https://doi.org/10.1016/j.ssmph.2023.101539