株式会社PREVENT(本社:愛知県名古屋市、代表取締役:萩原悠太、以下、PREVENT)は、社内の研究組織Insight Labが中心となり、山形大学医学部医療政策学講座・東北大学歯学部国際歯科保健学分野の池田登顕准教授、金沢大学融合研究域の金居督之准教授との共同研究を行い、文化的活動が疼痛へ与える影響における社会的孤立の装飾する効果について発表しました。


この研究は、文化的活動が社会的孤立を有する高齢者の痛みの発生率低下に寄与するかどうかを明らかにすることを目的としています。

PREVENTのInsight Labは、「科学と社会実践の融合」を具現化し、「一病息災」を実現することを使命としています。現代社会において、人々の社会的孤立は深刻化しています。特に、痛みの問題は高齢者の生活の質を大きく低下させる要因の一つであり、この問題に対処することは、人々が「一病息災」の理念に基づいたより良い生活を送るために必要です。近年、PREVENTは自治体と協働し、遠隔生活指導サービス「Mystar」を高齢者にも多く提供しています。Mystarはアプリ使用のみならず、指導者を通じて交流を行うことが特徴であり、このことは生活習慣改善のみならず社会的孤立に対しても貢献できる可能性を秘めています。このような背景から、今回Insight Labは、社会的孤立が人々の痛みの発生率に与える影響を明らかにする研究を実施しました。

研究結果は、ClinicalMedicine -Part of THE LANCET Discovry Science-  Volume 699 102477,  March 2024に掲載されました。

【研究の背景】

社会的孤立が高齢者の健康に与える影響は以前から指摘されていますが、文化的活動が痛みの発生率低減に寄与するかどうかは、これまで不明確でした。本研究では、社会的孤立の異なる側面を経験している高齢者を対象に、文化的活動が6年間のフォローアップ期間中に痛みの発生率にどのような影響を与えるかを検討しました。

【研究方法】

本研究は、英国の50歳以上の人々を対象とした英国縦断的老年学研究(English Longitudinal Study of Ageing, ELSA)の第6波(2012-2013年)、第7波(2014-2015年)、第8波(2016-2017年)、第9波(2018-2019年)の既存データを使用した二次データ分析です。この調査は、一般人口を対象とした年次健康検査調査であるHealth Survey for Englandに参加した人々から選ばれた参加者を対象にしています。

痛みの評価は、痛みの程度を尋ねる質問を含む自己報告式アンケートに基づいています。文化的活動は、美術館、ギャラリー、展示会、コンサート、劇場、オペラへの訪問の頻度を用いて評価されました。社会的孤立の指標は、配偶者やパートナーとの同居状況、家族や友人との接触頻度、組織や宗教団体への参加有無を含みました。

反実仮想モデルであるsequential doubly robust estimator を用いて、社会的孤立の各項目が生じた調査時点において文化的関与が行われた場合に、実際に観察された疼痛有訴率と比較してどの程度疼痛の有訴を減少するかを推計しました。

【主な発見】

文化的活動が全体として痛みの発生率を5.1%減少させる効果があることが示されました。この効果は、特に配偶者やパートナーと同居していない高齢者や、親しい家族との接触が少ない高齢者において顕著でした。また、時間の経過とともに社会的孤立のパターンにわずかな変化が見られたものの、文化的活動の効果は一貫して痛みの発生率を低減することが観察されました。

【研究の価値と社会実装の可能性】

本研究は、文化的活動が高齢者の痛みの発生率の低下に与える影響を評価するために、最新の疫学手法を用いました。分析の結果、特に配偶者やパートナーと同居していない高齢者、親しい家族との接触が少ない高齢者において、文化的活動が痛みの発生率を有意に低下させることが明らかになりました。これらの発見は、社会的孤立している高齢者における痛みの発生率を減少させる文化的活動の重要性を示し、高齢者の痛みの改善の際に社会的側面を考慮する必要性を示唆します。

このことから、PREVENTが展開する遠隔生活指導サービス「Mystar」は、単に生活習慣の改善を促すだけでなく、その過程で社会的孤独感を軽減する可能性を秘めていることが示唆されます。最近では、Mystarが自治体と手を組み提供されていることから、このプラットフォームを通じた交流が、高齢者の社会的孤立感の軽減及び痛みのリスク低減に寄与することが期待されます。

【論文情報】

論文名:Cultural engagement and prevalence of pain in socially isolated older people: a longitudinal modified treatment policy approach
掲載誌:eClinicalMedicine -Part of THE LANCET Discovry Science- VOLUME 69, 102477, MARCH 2024
著者:Takahiro Miki, Upul Cooray, Masashi Kanai, Yuta Hagiwara and Takaaki Ikeda
論文リンク:https://www.thelancet.com/journals/eclinm/article/PIIS2589-5370(24)00056-7/fulltext


【株式会社PREVENTについて】

2016年7月設立の名古屋大学医学部発スタートアップ企業。企業健保・自治体国保に向けて、保健事業の計画立案や生活習慣病重症化予防事業の提供、保健事業の事業評価などを推進。また、保険者支援の事業を通じて培った「データ解析力」、「RWD」、「各種ソリューション」等のアセットを活用し、製薬業界に関わるステークホルダーへの支援を推進している。大学発スタートアップとしてデータや研究ノウハウを活用したデータ駆動型の事業に強みを持つ。

代表者:代表取締役 萩原 悠太
本社:愛知県名古屋市東区葵一丁目26-12号 IKKO 新栄ビル9F
設立:2016年7月
事業内容:医療データ解析、生活習慣病の重症化予防支援事業等
ウェブサイト      : https://prevent.co.jp/

【Insight Lab from PREVENTについて】

PREVENTのビジョン、「科学と社会実践の融合」を具現化するために立ち上げられた研究部門であるInsight Labは、最新の科学的成果を社会に適用し、研究成果の社会への実装を通じて社会問題の解決に貢献することを目標としています。健康関連を含む多岐にわたる分野での研究プロジェクトを進行させ、理論から実践への架け橋となる役割を担っています。