2025.06.11 論文

【論文公開】性格特性がアプリ使用時の減量効果に影響することを解明

株式会社PREVENT(本社:愛知県名古屋市、代表取締役:萩原悠太、以下、PREVENT)は、社内の研究組織Insight Labが中心となり、名古屋大学大学院医学系研究科統合保健学専攻(※執筆当時)の足立拓史助教、金沢大学融合研究域融合科学系の金居督之准教授との共同研究を行い、肥満および非感染性疾患(生活習慣病)を有する人々の性格特性(プロトタイプ)がモバイルアプリベースの生活習慣改善支援プログラムにおけるアプリ利用度と減量効果に与える影響について発表しました。

現代社会において、肥満は高血圧、糖尿病、虚血性心疾患、慢性腎疾患などの非感染性疾患の主要なリスク要因となっており、その対策は急務です。PREVENTは健康保険組合や自治体と協働し、遠隔生活指導サービス「Mystar」を提供し、アプリと専門職による個別支援を組み合わせた生活習慣改善支援を行っています。個人の性格特性によってプログラムへの取り組み方や効果に違いが生じる可能性があることから、今回Insight Labは、性格特性がデジタルヘルス介入の効果に与える影響を明らかにする研究を実施しました。この研究は、個人の性格特性が肥満管理プログラムへの参加度合いと治療成果にどのような影響を与えるかを明らかにし、より個別化された効果的な介入プログラムの設計に貢献することを目的としています。

研究結果は、国際学術誌「DIGITAL HEALTH」に掲載されました。

研究の背景

肥満は世界的に増加傾向にある重要な健康課題であり、様々な非感染性疾患のリスク要因として緊急に対処すべき問題です。生活習慣の改善は肥満管理の基盤であり、近年はモバイルアプリやデジタル技術を活用した支援が、低コストで大規模な人々に同時にサポートを提供できる手段として注目されています。しかし、個人の性格特性がモバイルアプリベースの肥満管理プログラムにおける参加度や成果に与える影響については十分に解明されていませんでした。性格特性と健康行動の関係を理解することで、より個人に適したプログラム設計が可能となり、継続性と長期的な成功率の向上が期待できます。

研究方法

本研究は、BMI 25.0以上の肥満を有する2,716名の参加者を対象とした後ろ向き観察研究です。参加者は6ヶ月間のモバイルアプリベースの生活習慣改善支援プログラムに参加しました。性格特性は、神経症傾向、外向性、経験への開放性、協調性、誠実性の5つの次元からなる五因子モデル(ビッグファイブ)を用いて評価し、クラスター分析により参加者を3つの性格プロトタイプに分類しました。

  • Resilient型:高い適応力と柔軟性を持ち、ストレスや予期しない出来事に対して効果的に対処できるタイプ
  • Overcontrolled型:完璧主義で内向的、強い目標達成志向を持つ一方で、失敗や予期しない変化への対応が困難なタイプ
  • Undercontrolled型:活動的で外交的である一方で衝動的で計画性は低いタイプ

アプリ利用度の指標として、セッション頻度、利用時間、体重入力率、食事写真のアップロード数などを記録しました。主要評価項目である減量効果は、プログラム開始時の最初14日間と終了前の最後14日間の平均体重を比較した体重減少率として算出しました。また、日々の歩数、血圧、コレステロール値なども評価し、全体的な健康状態の変化を検討しました。

主な発見

研究の結果、性格プロトタイプがアプリ利用度と減量効果に有意な影響を与えることが明らかになりました。

  • Undercontrolled型は最も低いアプリ利用度を示し、1日あたりのアプリセッション数は2.63回、体重入力率は63.06%でした。
  • Resilient型は1日あたりのアプリ利用時間が最も長く(9.09分/日)、アプリへの積極的な関与がみられました。
  • Overcontrolled型は最も高い減量効果を示し、平均体重減少率は-3.08%で、Undercontrolled型(-2.55%)と比較して統計的に有意な差がありました(p = 0.015)。

血圧、歩数、コレステロール値といった他の健康指標については、いずれのプロトタイプ間でも有意な差は観察されませんでした。クラスター分析により、この3つのプロトタイプが参加者の行動や成果の違いを的確に捉えていることが確認されました。

研究の価値と社会実装の可能性

本研究は、性格プロトタイプがモバイルアプリベースの生活習慣改善支援プログラムにおける参加度と減量効果に有意な影響を与えることを明らかにしました。これらの知見は、性格特性を考慮したプログラム設計とその効果向上の重要性を示しています。

特にUndercontrolled型の参加者は活動的で外交的である一方で衝動的で計画性は低いため、アプリ利用が低調となる傾向があります。この層には自己効力感を高める現実的な行動目標の設定や、社会的サポートを活用したモチベーション強化策が有効と考えられます。一方、Overcontrolled型の参加者は完璧主義的で目標達成への強いコミットメントが減量効果に結びついていることが示唆されました。

これらの知見は、PREVENTが展開する生活習慣改善支援プログラム「Mystar」において、参加者の性格特性に応じた個別化アプローチを設計する上での科学的根拠となります。性格プロトタイプを考慮したプログラム設計により、より多くの人々が効果的に生活習慣改善に取り組むことができ、「一病息災」の理念実現に貢献することが期待されます。

論文情報

  • 論文名:Impact of personality prototypes on app engagement and weight loss in a mobile app-based lifestyle modification support program for individuals with obesity and non-communicable diseases

  • 掲載誌:DIGITAL HEALTH

  • 著者:Yuta Hagiwara, Kotoe Shimizu, Takuji Adachi, Masashi Kanai and Takahiro Miki

  • DOI: 10.1177/20552076251347891

  • 論文リンク:https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/20552076251347891

株式会社PREVENTについて

2016年7月設立の名古屋大学医学部発スタートアップ企業。企業健保・自治体国保に向けて、保健事業の計画立案や生活習慣病重症化予防事業の提供、保健事業の事業評価などを推進。また、保険者支援の事業を通じて培った「データ解析力」、「RWD」、「各種ソリューション」等のアセットを活用し、製薬業界に関わるステークホルダーへの支援を推進している。大学発スタートアップとしてデータや研究ノウハウを活用したデータ駆動型の事業に強みを持つ。

PREVENTInsight Labについて

PREVENTのビジョン、「科学と社会実践の融合」を具現化するために立ち上げられた研究部門であるInsight Labは、最新の科学的成果を社会に適用し、研究成果の社会への実装を通じて社会問題の解決に貢献することを目標としています。健康関連を含む多岐にわたる分野での研究プロジェクトを進行させ、理論から実践への架け橋となる役割を担っています。

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