2026.07.09 最終更新日2026.07.09 コラム

健康診断の再検査を放置していませんか?後回しにしてしまう心理と、そのリスクをわかりやすく解説

健康診断を受けたものの、再検査の案内を受け取ったまま時間が経ってしまっている…そんな方は多いのではないでしょうか。
「症状もないし、大丈夫だろう」「仕事が落ち着いたら行こう」など日々の仕事や家事に追われていると、 気付けば数か月、数年が経っていることもあります。ただ、後回しにしている間も、体の中では変化が少しずつ進んでいることがあります。自覚症状を感じにくい生活習慣病は、重い腰をあげる前に、悪化・進行してしまっていることも少なくありません。
この記事では、再検査や受診を後回しにしてしまう心理のしくみと、実際に受診するとどうなるのかを整理します。「怖いから行けない」「たぶん大丈夫だと思っている」「なんとなく面倒で後回しにしている」など、皆様の中にあるさまざまな気持ちに寄り添いながら、次の一歩を考えるヒントをお届けします。

「自分は大丈夫」はなぜ生まれるのか

再検査を後回しにしてしまうのは、意志の弱さでも、健康への無関心でもありません。
実は、人間が本来持っている「心の自己防衛の仕組み」が働いているからです。 

心の働き

どういうもの?

再検査への影響

楽観主義バイアス

「悪いことは自分には起きにくい」という無意識の思い込み

「症状もないし、たぶん大丈夫」と感じやすくなる

オストリッチ効果

不都合な情報から目を背けることで、不安を一時的に和らげようとする心理

「病院に行って自覚するのが怖い」「知らないままでいたい」と感じ、受診を避けてしまう

現状維持バイアス

変化を起こすことへの不安から、現状のままでいることを無意識に選んでしまう心理

「仕事が落ち着いたら行こう」と言い続けて、気づけば数年が経つ

見つかった方が対処できるのに、見つかることを避けようとする。非常に非合理的なのですが、人間は悪い情報から目を背けたがる心理を持っています。

「後でいいや」と感じてしまう心理的要因

「仕事が落ち着いたら行こうと思っている」と言い続けて気づけばもう数年、という方もいらっしゃるかもしれません。これは意志の弱さではなく、上記の現状維持バイアスに当てはまります。将来の健康よりも「今日の忙しさ」を優先してしまう傾向は、誰にでも(多かれ少なかれ)あるものです。

よくある心の声

  • 「症状ないし、たぶん、たまたまでしょ」
  • 「去年も同じ結果だったけど別に何もなかった」
  • 「行ったら絶対何か言われる気がして…(大きな病気だったらどうしよう)
  • 「仕事が落ち着いたら行こうと思ってる」(もう3年目)
  • 「薬を飲み始めたら一生飲み続けるんでしょ」

これらは、自己防衛の自然な働きです。

ただし、自覚症状の出にくい生活習慣病に対しては、この仕組みが裏目に出ます。なぜなら、気づいたときにはすでに「症状が出る段階」になっていることがあるからです。

 

例えば、使いすぎたかもと思うとクレジットカードの明細を開けられなくなりませんか?これは、見たら現実を直視しなければいけないと思うと、怖いと感じるからではないでしょうか。ですが、見なくても残高は減りますし、うっかり他の引き落としができないときもあります。健診結果を見たくないという心理状態も、似たようなことかもしれません。

数値を確認していない間も、体の中は悪化している可能性があります。しかし、怖さを振り切って一歩踏み出すと、対処法がわかり、将来の自分に感謝される行動を始めることができるのです。


放置をした先にあること

「最悪の場合、心筋梗塞や脳卒中で急に倒れるかもしれない」—そう言われても、なかなかリアルには感じられないものです。未来の大きなリスクより、目の前の日常を優先してしまうのは、人として自然な反応です。

しかし、放置が続くと起きることは、「突然倒れる」だけではありません。

例えば血糖値が高い状態が続けば、腎臓がじわじわと傷つき、やがて人工透析(血液中の老廃物や余分な水分を、機械を使って人工的に取り除く治療法) が必要になることがあります。週に数回の通院が必要になり、一度の治療に数時間かかることもあります 。手足のしびれが進めば、仕事の手を止めざるをえない日が来るかもしれません。息切れがひどくなって、好きなことを楽しめる体でいられなくなることも。

そうした変化は、自分だけでなく、大切な人との暮らしにも少しずつ影響していきます。

受診をためらう気持ちは、よくわかります。ただ、「今の自分が楽しめていること」を、できるだけ長く続けていくために—好きな食事、行きたい場所、一緒にいたい人—そのために再検査という選択肢がある、と考えてみてもいいかもしれません。

再検査を受けるメリットは?

再検査の結果はおおよそ3つのパターンに分かれます。そしてどのパターンになっても再検査には大きな意味があります。

パターン① 「問題なし」と言われる

そもそも健康診断は一時点の体の状態を見ています。前日の食事、睡眠不足、疲労、緊張などの一時的な要因で数値が増減することは珍しくありません。再検査で「異常なし」となるケースもあります。

【メリット】根拠のある「安心」が手に入る。
「医師に見てもらって、大丈夫だった」という安心は、自分で思い込んでいた「たぶん大丈夫」とは、安心の質がまったく異なります。指摘された箇所以外にも、健診結果で気になることを受診時に相談できるのも安心です。

パターン② 「経過観察」になる

数値は気になるものの、すぐ治療が必要なレベルではない状態です。3〜6か月ごとの測定と、食事・運動・睡眠などの生活習慣の見直しを勧められることが多いです。

【メリット】薬を使わずに改善できる可能性がある。
「じゃあ今は何もしなくていいじゃない」と思われるかもしれませんが、この段階こそが今後の健康の分岐点です。経過観察を続けて改善に向かう人と、放置して数年後に治療が必要になる人の差は、この段階で「確認できたかどうか」にかかっています。食事内容の見直しや軽い運動習慣の導入など、日常の小さな変化が数値の改善につながることもあります。自分の力で体を変えられる可能性がある、とても大切な時期です。

パターン③ 治療(内服など)が始まる

血圧・血糖(HbA1cや血糖値)・脂質(コレステロールや中性脂肪)などが一定の基準を超えた場合、薬が処方されることがあります。

【メリット】早く気づいた分だけ悪化を防げる。
「ついに薬か…」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、これは体からのサインに早く気づいて、対処できたということでもあります。放置して合併症が出てから受診するより、ずっと早い段階で管理を始められるのは、長い目で見て大きな差です。

生活習慣病で受診が続く場合の生活イメージ 

「受診を続けることになったら、生活がどう変わるんだろう」とイメージがつかず、不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。生活習慣病で受診することになった場合、どんな生活になるのか、についてお伝えします。 

最初の受診・処方

問診・血液検査・血圧測定などを経て、必要であれば薬が処方されます。最初の受診は検査だけで終わることも多いです。処方されたとしても、少量から始めることが一般的です(状態によります)。

1〜3か月後に再診

薬の効き具合を確認するために定期的に受診します。多くは1〜3か月に1回、医院によりますが採血・血圧測定・問診を行うことが一般的です。ここで大切なのは、薬を飲むだけではなく、生活習慣の改善をセットで取り組むことです。糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病は、日々の食事・運動習慣・睡眠や喫煙習慣、体重のコントロールなどを見直すことが数値改善の大きな鍵です。薬の服用と並行して行うことで、改善効果が高まります。

数値が安定したら

数値がコントロールできていれば、受診間隔が延びることもあります。生活習慣の改善で数値が十分に下がれば、医師の指示のもとで、減薬を検討できるケースもあります。生活習慣を変えることが、将来の選択肢を広げることにつながります。 

 

なお、生活習慣病の治療のために薬を服用されている方は決して少なくありません。

たとえば、高血圧薬の服用者は60歳代の約3割、70歳以上では約5割に達するとされています(厚生労働省「国民健康・栄養調査」より)。薬は制限ではなく、普段の生活を続けるための選択肢の一つです。

気づいたときが、動き始めるタイミング

再検査を後回しにしてしまうのは、意志の弱さではありません。「自分は大丈夫」という楽観主義バイアスや、不快な情報を避けようとするのは、人間だれもが持つ自然な心理の働きです。

ただ、自覚症状が出にくい生活習慣病に対しては、この「見ないでいる時間」が、将来の選択肢を少しずつ狭めていく可能性があります。

再検査の結果は、「異常なし」「経過観察」「治療開始」のいずれであっても、今の自分の体の状態を知るための大切な情報です。知ることは、対処できることでもあります。

まずは近くにある内科や、風邪の時に行く”かかりつけ医”に、予約の電話1本から。いきなりすべてを変えようとしなくて構いません。今日の小さな一歩が、これからの生活の質につながっていきます。

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