2023.10.27 論文

【論文公開】健康行動をもとに、生活習慣病リスクがある日本人就労層のクラスターの特定を行った成果を発表

株式会社PREVENT(本社:愛知県名古屋市、代表取締役:萩原悠太、以下 PREVENT)は、社内研究組織Insight Labを中心に、非感染性疾患(生活習慣病)のリスクを抱える日本の就労層12,168名の実データを解析し、その健康行動のパターンをもとに、年齢や性別も考慮して5つのクラスター(グループ)に分類できることを明らかにしました。これは、生活習慣病のリスクを抱える集団が決して一様ではなく、それぞれ異なる健康上の課題と特性を持つことを示すものであり、一律ではなく各グループの特性に応じた健康づくり支援の可能性を示唆しています。

本研究成果は、公衆衛生分野の国際学術誌である SSM – Population Health に掲載されました。
参照リンク: https://doi.org/10.1016/j.ssmph.2023.101539

本研究のポイント

非感染性疾患(生活習慣病)のリスクがあるが未診断の日本の就労層12,168名(80%が男性、40〜59歳が中心)を対象に、健康行動のパターンを潜在クラス分析(Latent Class Analysis:LCA)を用いて解析しました。

年齢・性別に加え、運動・喫煙・飲酒・食習慣・生活改善意識・受診頻度・服薬・血管疾患の既往などの健康行動をもとに分析した結果、統計的な妥当性と実用的な解釈可能性の両面から、5クラスモデルが最も適切と判断されました。

同定された5つのクラスターは、クラスター1「健康的なライフスタイルを送るが病院が苦手」(2,389名)、クラスター2「健康的な生活習慣を持つ女性」(2,215名)、クラスター3「一般的な集団」(4,395名)、クラスター4「生活習慣の改善が必要な中年層」(2,098名)、クラスター5「生活習慣病治療群」(1,071名)でした。

これらの結果は、生活習慣病のリスクを抱える就労層に対して、集団を画一的に扱うのではなく、個々の健康行動や嗜好に応じた個別化された公衆衛生アプローチが有効である可能性を示唆しています。

研究の概要

非感染性疾患(生活習慣病)は、糖尿病・高血圧・心疾患などを含む世界的に重大な健康問題です。これらの疾患は喫煙・飲酒・運動不足といった健康行動の積み重ねによって引き起こされ、しかも単一の習慣ではなく、複数の不健康な習慣が特定のパターンをもって重なり合うことが知られています。そのため公衆衛生の集団アプローチにおいては、集団の特性を理解し、その特性に合わせた介入を提供することが効果的とされています。

しかし、これまで健康行動のクラスタリングに関する研究は欧米を中心に、比較的小規模なサンプルで行われてきたものが多く、文化や生活習慣の異なる日本の就労層に、そうしたパターンがどのように現れるかは十分に検討されていませんでした。とりわけ、健康な人や既に重症の生活習慣病を有する人まで幅広く含む集団を対象とした研究が多く、早期予防の観点から重要な診断前のリスク保有者に絞った検討はほとんど行われていませんでした。

そこで本研究は、非感染性疾患のリスクを抱えるが未診断の日本の就労層を対象に、年齢・性別の影響も考慮しながら、健康行動の組み合わせがどのようなクラスターを形成するかを明らかにすることを目的とした横断研究です。対象は、PREVENTが健康保険組合から提供を受けた匿名加工済みのレセプト情報および健康診断データのうち、2013年4月〜2021年7月の間に健康診断を受け、血圧・脂質・血糖のいずれかで国や各学会が定める基準値を超えるリスクを有する未診断の個人です。健康行動は、日本の就労者に義務づけられている年1回の健康診断で用いられる国推奨の標準質問票(運動習慣、喫煙、飲酒、食習慣、生活改善意識、過去1年間の受診回数・服薬、血管疾患の既往)で評価し、潜在クラス分析によりクラスターを特定しました。

研究の成果

解析対象となった12,168名のうち、80%(9,703名)が男性、20%(2,465名)が女性で、年齢は40〜49歳が39%、50〜59歳が39%と中年層に集中していました。健康行動については、定期的な運動をしていない人が78%、健康的な食習慣がない人が62%、毎日飲酒する人が28%、喫煙者が32%でした。

1〜6クラスのモデルを比較した結果、5クラスモデルと6クラスモデルがBIC・AIC・G²で良好な値を示しましたが、6クラスモデルは特性が重複し解釈しにくいクラスを含んでいたのに対し、5クラスモデルはより明確で解釈可能なグループ分けが得られたため、5クラスモデルが最も適切と判断されました。

同定された5つのクラスターの特徴は次のとおりです。クラスター1(2,389名)「健康的なライフスタイルを送るが病院が苦手」は、運動をし夜遅くの食事を控えるなど健康的である一方、前年に病院を訪れていない人が74%を占めました。クラスター2(2,215名)「健康的な生活習慣を持つ女性」は、喫煙しない人が95%、ほとんど/まったく飲酒しない人が68%で、女性が99%を占めました。クラスター3(4,395名)「一般的な集団」は最も人数が多く、比較的若く飲酒・受診の頻度が少ないのが特徴でした。クラスター4(2,098名)「生活習慣の改善が必要な中年層」は、毎日飲酒し夜に頻繁に食事をとり、約半数が喫煙者でした。クラスター5(1,071名)「生活習慣病治療群」は、50歳以上が73%と高齢者が多く、生活習慣病関連の薬を服用している人が53%、既往のある人が30%いました。なお、飲酒・喫煙・受診回数がクラスター分類の重要な要素であった一方、年齢はクラスター形成の主要因ではなく、若年層・高齢層のいずれもが健康的なクラスターと不健康なクラスターの双方に見られました。

社会的意義と実装可能性

本研究は、10,000名を超える大規模な実データを用い、生活習慣病のリスクを抱える日本の就労層の健康行動が一様ではなく、明確に区別できる5つのパターンを形成することを示した点で意義があります。集団を画一的に扱うのではなく、各グループの特性に応じたアプローチが公衆衛生上有効であることを示唆しています。

実装の観点からは、グループごとに異なる介入の方向性が考えられます。病院を敬遠する傾向のあるクラスター1に対しては、遠隔医療やウェアラブルデバイスなど、従来の医療機関受診にとらわれない支援が有効である可能性があります。健康意識の高い女性が中心のクラスター2に対しては、妊娠・生殖に関する健康など、ジェンダー特有の課題に焦点を当てた介入が効果的と考えられます。生活改善が必要な中年層のクラスター4に対しては、ウェアラブルデバイスを活用した生活習慣の改善支援が期待され、生活習慣病を治療中の高齢者が多いクラスター5に対しては、慢性疾患の管理や重症化予防に重点を置いた支援が求められます。

一方で、本研究は自己報告に基づく横断研究であり、社会的に望ましい回答が含まれる可能性や、健康行動の変数が二値・順序尺度に限られること、教育歴や栄養状態など一部の変数を含んでいないといった限界があります。今後は、各クラスターの特性に合わせた介入を設計・実装し、その効果や健康アウトカムの長期的な変化を検証することが求められます。

※参考(プレスリリース):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000034.000036875.html

Mystar(マイスター)について

株式会社PREVENTは、生活習慣病を治療している方々の重症化や再発を防ぐための、オンライン完結型の生活習慣改善支援プログラム「Mystar(マイスター)」を提供しています。高血圧・糖尿病・脂質異常症・脳血管疾患・虚血性心疾患などを対象に、専用アプリとモニタリング機器を用いて脈拍・歩数・睡眠・塩分摂取量などのライフログを可視化し、心臓リハビリテーション指導士や糖尿病療養指導士など専門性の高いスタッフが2週間に1回の電話面談を通じて一人ひとりに寄り添った個別サポートを行います。健康保険組合の組合員・企業の従業員の健康づくりを支援し、重篤な疾病を未然に防ぐことで、医療費の適正化と健康経営に貢献します。これまでに約200組合に導入され、10,000名以上にサービスを提供しています。詳細:https://prevent.co.jp/mystar/

受診勧奨サービスについて

株式会社PREVENTは、健康診断の結果が悪く「要治療」と判断されたものの、十分に通院・服薬していない方に対して、医療機関への受診をお勧めする「受診勧奨サービス」を提供しています。医療機関への早期受診を促すことで、重症化を予防します。医療データ解析サービス「Myscope」や生活習慣改善支援プログラム「Mystar」による重症化予防事業で培ったデータ解析技術やノウハウを活かし、より実効性の高い受診勧奨事業を実現します。

株式会社PREVENTについて

2016年7月設立の名古屋大学医学部発スタートアップ企業。企業健保・自治体国保に向けて、保健事業の計画立案や生活習慣病重症化予防事業の提供、保健事業の事業評価などを推進。また、保険者支援の事業を通じて培った「データ解析力」、「RWD」、「各種ソリューション」等のアセットを活用し、製薬業界に関わるステークホルダーへの支援を推進している。大学発スタートアップとしてデータや研究ノウハウを活用したデータ駆動型の事業に強みを持つ。

PREVENT Insight Labについて

PREVENTのビジョン、「科学と社会実践の融合」を具現化するために立ち上げられた研究部門であるInsight Labは、最新の科学的成果を社会に適用し、研究成果の社会への実装を通じて社会問題の解決に貢献することを目標としています。健康関連を含む多岐にわたる分野での研究プロジェクトを進行させ、理論から実践への架け橋となる役割を担っています。

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