2026.02.04 論文

【論文公開】遠隔疾病管理プログラム『Mystar』データから、血圧変化を早期に予測する試み ― 直近の家庭血圧が最も有力な予測因子、アプリ利用ログが早期のリスク層特定に寄与する可能性

株式会社PREVENT(本社:愛知県名古屋市、代表取締役:萩原悠太、以下 PREVENT)の研究チームであるPREVENT Insight Labは、金沢大学を筆頭とする共同研究において、遠隔疾病管理プログラム『MyStar』に参加した高血圧・脂質異常症・糖尿病の患者2,318名のリアルワールドデータを解析し、24週間のプログラムにおける収縮期血圧(SBP)の変化を予測するモデルを検討しました。本研究は、機械学習と特徴量エンジニアリングを用いて、日常的に収集される家庭血圧やアプリ利用状況から、支援を強化すべき対象者を早期に見極められる可能性を示すものです。本成果は学術誌『Hypertension Research』に掲載されました(DOI: https://doi.org/10.1038/s41440-026-02569-w )。

【本研究のポイント】

  • 遠隔疾病管理プログラム『MyStar』参加者2,318名(平均年齢56.7歳、男性86.6%、高血圧81.1%)のリアルワールドデータを解析。
  • 血圧変化の予測において、直近の家庭血圧(朝・晩のSBP、ベースライン血圧)が最も有力な予測因子であることを確認。
  • アプリ利用ログ(ライフログ閲覧時間、ホーム画面閲覧時間など)が、プログラム早期の血圧予測に寄与する上位10因子に含まれることを確認。
  • 期間が進むほど直近血圧の重要性が高まり、22週時点では予測モデルの相関は約0.85と高い精度に到達。
  • 特徴量エンジニアリング(時系列データから新たな予測変数を自動生成する手法)は、早期段階で個別因子と血圧変化の相関を高めたものの、モデル全体の予測精度の大幅な向上にはつながらなかった。

【研究の概要】

高血圧は心血管・脳血管疾患の主要なリスク因子であり、その管理には継続的なモニタリングが欠かせません。スマートフォンアプリやウェアラブル機器、遠隔コーチングを組み合わせた遠隔疾病管理プログラムは、家庭血圧や生活習慣データを継続的に収集できる新たな機会を提供します。本研究では、こうして得られる縦断的データから、特徴量エンジニアリングという手法を用いて有用な予測変数を抽出し、収縮期血圧の変化予測を改善できるかを検証しました。

対象は、2018年12月〜2023年11月に『MyStar』を完了した患者のうち、解析に必要な血圧測定データを有する2,318名です。プログラムは6か月間にわたり、2週間ごと計12回の医療専門職による電話面談と、アプリを通じたチャット・生活データ記録(体重・血圧・身体活動・食事・推定塩分摂取量など)で構成されています。解析では、4・8・12・22週の各時点で、各時点までに得られたデータのみを用いてSBP変化を予測するElasticNet回帰モデルを構築し、特徴量エンジニアリングの有無で性能を比較しました。

【研究の成果】

  • プログラム全体を通じて平均SBPは緩やかに低下し、終了時点で平均3.5 mmHgの低下が認められた。
  • 4週時点では、特徴量エンジニアリングにより生成された上位因子が、元の最良の予測因子(相関r=0.455)よりも強い相関(r=0.561)を示した。一方、モデル全体の予測性能は両者でほぼ同等(r=0.561 vs 0.559)だった。
  • 22週時点では、両モデルとも約0.85の高い相関を達成し、性能差はほとんど認められなかった。
  • アプリ利用ログ(ライフログ閲覧時間など)は、プログラム初期の予測において重要な因子として同定された。ただし、期間が進むにつれて直近の血圧値の重要性が高まり、利用ログの相対的な寄与は低下した。

【社会的意義と実装可能性】

本研究は、日常的に収集される家庭血圧とアプリ利用ログを組み合わせることで、プログラム早期の段階から「血圧が十分に下がりにくい可能性のある対象者」を見極められる可能性を、リアルワールドデータで示しました。とくに、アプリへの関与が早期に低下している参加者に対しては、記録を促すリマインドや、より手厚い電話面談・チャットによるフォローアップといった、個別化された支援を早期に起動する手がかりとなり得ます。これは、通院に依存しがちな従来の血圧管理を補完し、保険者・企業ベースの遠隔プログラムが広く普及するアジア地域においても有用なアプローチとなり得ます。

PREVENTは、生活習慣病の重症化予防をはじめとする健康支援事業で培ったデータ解析技術とノウハウを活かし、こうした科学的知見を自社の健康支援サービスや保険者支援の実践に還元し、より実効性の高い遠隔疾病管理の社会実装につなげてまいります。

なお本研究には、対象がプログラムを完遂した参加者に限られ男性の比率が高いこと、降圧薬の変更が自己申告に基づくこと、行動データが週単位で集計されており短期的な変動を捉えきれていないことなどの限界があり、今後は外部データによる検証や、より高頻度のデータを用いた予測精度の向上が求められます。

【MyStar(マイスター)について】

MyStarは、株式会社PREVENTが提供するオンライン完結型の生活習慣改善支援プログラムです。高血圧・糖尿病・脂質異常症・脳血管疾患・虚血性心疾患などを対象に、専用アプリとモニタリング機器で日々のライフログを可視化し、看護師・管理栄養士・理学療法士などの医療専門職が2週間に1回の電話面談で一人ひとりに寄り添った支援を行います。約200の健康保険組合、10,000名以上に利用されています。 詳細:https://prevent.co.jp/mystar/

【株式会社PREVENTについて】

2016年7月設立、名古屋大学医学部発のスタートアップ。医療データ解析やリアルワールドデータ(RWD)を活用した健康支援ソリューションを提供しています。 代表取締役:萩原 悠太/本社:愛知県名古屋市/ウェブサイト:https://prevent.co.jp/

【PREVENT Insight Labについて】

「科学と社会実践の融合」をビジョンに掲げるPREVENTの研究部門。最新の研究成果を社会実装につなげ、人々の健康課題の解決を目指しています。

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