株式会社PREVENT(本社:愛知県名古屋市、代表取締役:萩原悠太、以下 PREVENT)は、社内研究組織Insight Labを中心に、変形性膝関節症またはそのリスクを有する中高年を対象に、日常の身体活動をどのように調整することが膝関節置換術の予防に有用かを検証しました。米国の大規模縦断研究データを用いて複数の仮想介入シナリオを比較した結果、身体活動量が高すぎる人では適正な水準まで下げ、身体活動量が少ない人では無理のない範囲で増やすことが、膝関節置換術リスクの低下に有用である可能性が示されました。
本研究成果は、国際学術誌 Aging Clinical and Experimental Researchに掲載されました。
参照リンク:https://doi.org/10.1007/s40520-026-03360-0
変形性膝関節症は、痛みや身体機能の低下を引き起こし、進行すると膝関節置換術が必要となることがあります。身体活動はその予防や管理に重要とされていますが、膝関節に対しては多ければ多いほどよいとは限らず、かえって悪影響を及ぼす可能性も指摘されてきました。そこで本研究では、変形性膝関節症またはそのリスクを有する人において、身体活動量をどのように最適化することが膝関節置換術の予防に有用かを検討しました。
本研究では、米国の大規模縦断研究である Osteoarthritis Initiative(OAI)のデータを用いました。対象は、膝変形性関節症またはその高リスク状態にある45~79歳の地域在住成人で、強い痛みを有する人は除外されました。主要解析には2,729人、4,858膝が含まれ、96か月間にわたり膝関節置換術の発生を追跡しました。
身体活動については、OAIで収集された高齢者向け身体活動質問票であるPhysical Activity Scale for the Elderly(PASE)のスコアを用いました。そのうえで、身体活動量を維持する場合、身体活動量が高すぎる人の身体活動量を適正化する場合、身体活動量が少ない人の身体活動量を少しずつ増やす場合など、複数の仮想介入シナリオを設定し、それぞれの条件下で膝関節置換術リスクがどのように変化するかを比較しました。
解析では、観察データから理想的な介入試験に近い比較を行う因果推論の考え方を用い、年齢、性別、BMI、膝の状態、痛みや身体機能、併存症、膝関連の既往や薬剤使用などの主な影響を考慮したうえで、各シナリオの推定リスクを算出しました。
基準となる「身体活動量をそのまま維持する」シナリオでは、膝関節置換術の推定発生割合は4.71%(95%信頼区間:4.37%-5.05%)でした。これに対し、身体活動量が高すぎる人のみを適正な水準に調整したシナリオでは、推定発生割合は2.98%(95%信頼区間:2.39%-3.57%)まで低下しました。リスク比は0.66でした。
さらに、身体活動量が少ない人の身体活動量を10%または20%増やしたシナリオでは、推定発生割合は2.71%まで低下しました。特に20%増加のシナリオでは、7つのシナリオの中で最も低いリスク比が示されました。一方で、身体活動量を30~50%増やした場合は、推定発生割合が3.37~3.54%となり、10~20%増加の場合と比べると利益は小さくなりました。
これらの結果は、身体活動を単純に増やすことが常に最善とは限らず、身体活動量が高すぎる人では適正な水準へ調整し、身体活動量が少ない人では無理のない範囲で増やすことが重要である可能性を示しています。また、身体活動量が高い群では、仕事に関連する身体活動量が高い傾向がみられました。このことから、膝への負荷を考える際には、運動や余暇の身体活動だけでなく、仕事や日常生活に伴う身体的負荷も含めて評価する必要があると考えられます。
本研究は、膝関節置換術の予防を考えるうえで、身体活動を一律に増やすことだけではなく、身体活動が多すぎる場合と少なすぎる場合の双方に応じて、身体活動を最適化することが重要である可能性を示しました。特に、身体活動量が高い人に対しては、その内容や負荷のかかり方を見直すことが重要であり、仕事や生活の中で膝にかかる負担をどう調整するかという視点が求められます。
このような知見は、保健指導や運動指導、職場や地域における予防施策を検討する際にも有用と考えられます。また、本研究で用いたような仮想介入シナリオに関連した枠組みは、将来的にPREVENTが保有する健康関連データを用いて、どのような介入や指導がより有効かを検討する際にも応用できる可能性があります。PREVENTは、生活習慣病の重症化予防の会社から運動器疾患や高齢者への対応を含む慢性疾患のDisease Management を担う企業へ進化を進めています。本研究はその取り組みの一つの成果となります。
一方で、本研究は観察データを用いたシミュレーション的な比較であるため、実際の介入試験ではありません。また、身体活動は質問票に基づいて評価されており、対象も強い痛みのない人に限られています。そのため、結果の解釈や一般化には配慮する必要があります。
2016年7月設立の名古屋大学医学部発スタートアップ企業。企業健保・自治体国保に向けて、保健事業の計画立案や生活習慣病重症化予防事業の提供、保健事業の事業評価などを推進。また、保険者支援の事業を通じて培った「データ解析力」、「RWD」、「各種ソリューション」等のアセットを活用し、製薬業界に関わるステークホルダーへの支援を推進している。大学発スタートアップとしてデータや研究ノウハウを活用したデータ駆動型の事業に強みを持つ。
PREVENTのビジョン、「科学と社会実践の融合」を具現化するために立ち上げられた研究部門であるInsight Labは、最新の科学的成果を社会に適用し、研究成果の社会への実装を通じて社会問題の解決に貢献することを目標としています。健康関連を含む多岐にわたる分野での研究プロジェクトを進行させ、理論から実践への架け橋となる役割を担っています。
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