2025.07.09 論文

【論文公開】健康行動のクラスター別に個別化した受診勧奨通知は受療行動を後押しするか?

株式会社PREVENT(本社:愛知県名古屋市、代表取締役:萩原悠太、以下 PREVENT)は、社内研究組織 Insight Lab を中心に、金沢大学融合研究域融合科学系の金居督之准教授らとの共同研究を実施し、非感染性疾患(NCDs)リスクが高い就労者に対し、健康行動のクラスター別に動機づけ要素を組み込んだ個別化された通知が受療行動および疾病管理に与える影響を検証しました。本研究成果は国際学術誌 Patient Education and Counseling に掲載されました。

研究の背景

本邦では、毎年の健診で高血圧、高血糖、脂質異常が指摘されても、受診に至るのは僅か20〜30%程度にとどまります。健診で異常値が見つかった人が受診を控えると、様々な疾患の発症リスクが高まるため、このようなリスクがある人をいかに早期に受診に繋げるかが保健事業の課題になっています。我々は先行研究において、大規模リアルワールドデータを解析し、NCDsリスクを抱える就労層の健康行動を5つのクラスターに分類しました。本研究では、クラスターごとの行動特性に合わせた動機づけ要素を盛り込んだを受診勧奨通知を送付し、受診率向上に寄与するかを検証しました。

研究方法

研究概要

研究デザイン

ランダム化比較試験

対象

  • 健康保険組合に所属する被保険者の内、以下を満たす者
    1. 特定健診結果より以下のいずれかに合致する者
      • 血圧:収縮期血圧160mmHg以上もしくは拡張期血圧100mmHg以上
      • 血糖:空腹時血糖140mg/dL以上もしくはHbA1c7.0%以上
      • 脂質:LDLコレステロール値180mg/dL以上もしくはHDLコレステロール値30mg/dL以下もしくは中性脂肪500mg/dL以上
    2. 特定健診日から過去3か月以内に上記疾患に関する受診歴がなく、特定健診日以降の最新のレセプトデータで対象疾患に関する受診歴がない者

介入

  • 介入群:5つのクラスターの行動特性に合わせ、動機付け要素を反映した通知を送付
  • 対照群:従来型の標準通知(異常値を記載)を送付

アウトカム

  • 主要アウトカム:受診勧奨通知送付後3か月以内の受診
  • 副次的アウトカム:通知後1年間の受診継続率(3回以上の受診)、 翌年度の健診における異常値の改善率

主な結果

指標 介入群 対照群 p値
受診率(3か月) 10.6% (8/76) 17.7% (14/79) 0.252
受診継続率 50.0% 57.1% 1.000
異常値改善率 45.9% (34/74) 41.0% (32/78) 0.546

いずれのアウトカムについても群間に差は認めませんでした。一方で、両群ともに受診した人は翌年度の健診での異常値改善率が高値を示しました。

研究の価値と社会実装の可能性

本研究は、健康保険組合が行う受診勧奨事業をランダム化比較試験によって、学術的に厳密な方法で効果を検証した点に大きな特徴があります。通知を一度郵送するだけでは受診率を高められませんでしたが、受診に至った方では翌年度の検査値が改善しており、早期受診の重要性を裏づけられたことも重要な知見です。これは、受診勧奨プログラム全体の意義を高める知見となることが期待されます。今後は、本研究で得た行動科学の知見を基盤に、早期受診を促進する仕組みづくりを保険者および自治体とともに進め、NCDs の重症化予防に貢献してまいります。

論文情報

  • 論文名:Effect of personalized messages tailored to distinct health behavior clusters on healthcare-seeking in high-risk populations for noncommunicable diseases in Japan: A randomized controlled study
  • 掲載誌:Patient Education and Counseling
  • 著者:Masashi Kanai, Kojiro Yamamoto, Takahiro Miki, Yuta Hagiwara
  • DOI: 10.1016/j.pec.2025.109242
  • 論文リンク:https://doi.org/10.1016/j.pec.2025.109242

株式会社PREVENTについて

2016年7月設立の名古屋大学医学部発スタートアップ企業。企業健保・自治体国保に向けて、保健事業の計画立案や生活習慣病重症化予防事業の提供、保健事業の事業評価などを推進。また、保険者支援の事業を通じて培った「データ解析力」、「RWD」、「各種ソリューション」等のアセットを活用し、製薬業界に関わるステークホルダーへの支援を推進している。大学発スタートアップとしてデータや研究ノウハウを活用したデータ駆動型の事業に強みを持つ。

PREVENT Insight Labについて

PREVENTのビジョン、「科学と社会実践の融合」を具現化するために立ち上げられた研究部門であるInsight Labは、最新の科学的成果を社会に適用し、研究成果の社会への実装を通じて社会問題の解決に貢献することを目標としています。健康関連を含む多岐にわたる分野での研究プロジェクトを進行させ、理論から実践への架け橋となる役割を担っています。

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