2024.02.27 論文

【論文公開】アプリを用いた遠隔疾病管理プログラム「MyStar」による虚血性心疾患患者のLDLコレステロール改善 ― 実施可能性と初期的効果を検証

株式会社PREVENT(本社:愛知県名古屋市、代表取締役:萩原悠太、以下 PREVENT)は、社内研究組織Insight Labを中心に、慢性の虚血性心疾患(IHD)を持つ266名の実データを解析し、スマートフォンアプリを用いた遠隔の疾病管理プログラム「MyStar」への6か月間の参加により、冠動脈疾患の主要なリスク因子であるLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が有意に低下することを明らかにしました。特に、ベースラインのLDLコレステロールが高い方ほど効果が大きく、体重や中性脂肪の改善もみられました。これは、当社のスマートフォンアプリMystarのようなmHealth(モバイルヘルス)が虚血性心疾患の継続的な管理を支援しうることを、実社会のデータで示すものです。

本研究成果は、デジタルヘルス分野の国際学術誌である JMIR Formative Research に掲載されました。
参照リンク: https://doi.org/10.2196/56380

本研究のポイント

慢性の虚血性心疾患(IHD)を持つ266名を対象に、mHealthベースの遠隔疾病管理プログラム「MyStar」の実施可能性と初期的な効果を、LDLコレステロールを主要指標として検証しました。

6か月間のプログラムにより、LDLコレステロールは平均98.82 mg/dLから86.62 mg/dLへと有意に低下しました(p<.001)。あわせて体重(77.51 kg→72.39 kg、p<.001)や中性脂肪も有意に減少し、1日歩数は8,565歩から9,310歩へと有意に増加しました(p=.01)。

ベースラインのLDLコレステロールが100 mg/dL以上の群(129名)では、LDLコレステロールが平均131.56 mg/dLから96.17 mg/dLへと大幅に低下し(p<.001)、100 mg/dL未満の群との変化量の差は−45.02 mg/dLと大きく、リスクの高い方ほど効果が顕著でした。

プログラムの継続率は98.5%と高く、担当コーディネーターへの満足度(平均4.77)やチャット機能(同4.33)など対話的な要素が高く評価され、mHealthによる継続的な疾病管理の実施可能性が示唆されました。

研究の概要

虚血性心疾患(IHD)は世界的にみて罹患・死亡の主要な原因であり、その管理には、LDLコレステロールなどの重要な指標を継続的にコントロールすることが欠かせません。そのためには薬物療法に加え、食事・運動・禁煙といった生活習慣の改善が重要ですが、こうした変化を継続的な支援なしに維持することは容易ではありません。近年、スマートフォンなどを活用したmHealth(モバイルヘルス)が、継続的で個別化された支援を提供する有望な手段として注目されています。しかし、IHDのような慢性疾患の維持期において、LDLコレステロールを主要指標としてmHealthの有用性を検証した研究はほとんどありませんでした。

そこで本研究は、慢性のIHDを持つ個人を対象に、mHealthベースの疾病管理プログラム「MyStar」の実施可能性と初期的な効果を、冠動脈疾患のリスク因子(特にLDLコレステロール)に着目して評価することを目的としたフォーマティブ研究です。

対象は、2018年12月〜2022年10月にMyStarに参加した、IHDの既往が確認された266名です。安全性に配慮し、参加前に安静時12誘導心電図・運動負荷心電図・心エコー検査による心臓リスク評価を実施し、重症の不整脈や運動負荷での虚血反応、駆出率45%未満や中等度以上の弁膜症などに該当する方、心不全での入院歴や強心薬使用のある方は除外し、参加には主治医の同意を必要としました。プログラムは、看護師・管理栄養士・理学療法士などの多職種チームが、6か月間で計12回の隔週電話面談を通じて、専用アプリとウェアラブルデバイス(Fitbit、塩分モニタリング機器など)のデータをもとに個別の助言と行動変容支援を行うものです。介入前後の変化を対応のあるt検定で評価し、ベースラインのLDLコレステロールが100 mg/dL以上/未満の群に分けた層別解析・群間比較も行いました。

研究の成果

当初270名が登録し、4名の除外を経て266名が解析対象となり、継続率は98.5%と高い水準でした。死亡や再発などの重篤な有害事象は認められませんでした。参加者の92.9%が男性、平均年齢は56.4歳で、高血圧74.1%、糖尿病50.8%、脂質異常症68.4%を併存していました。

主要アウトカムであるLDLコレステロールは、平均98.82 mg/dLから86.62 mg/dLへと有意に低下しました(p<.001)。体重も77.51 kgから72.39 kgへ、中性脂肪も有意に減少し(いずれもp<.001)、1日歩数は8,565歩から9,310歩へ有意に増加しました(p=.01)。HbA1cや血圧には統計的に有意な変化はみられなかったものの、全体として心血管の健康の改善が示唆されました。

ベースラインのLDLコレステロールが100 mg/dL以上の群(129名)では、LDLコレステロールが平均131.56 mg/dLから96.17 mg/dLへと大幅に低下し(p<.001)、体重・中性脂肪・HbA1c・尿酸・塩分摂取量も有意に改善しました。一方、100 mg/dL未満の群(137名)ではLDLコレステロールがわずかに上昇しました。両群の変化量の差は−45.02 mg/dLと大きく、ベースラインのLDLコレステロールが高い方ほどプログラムの効果が大きいという、個別最適化された有用性が示されました。また、参加者満足度の調査では、担当コーディネーターへの満足度(平均4.77)やチャット機能(同4.33)など、医療専門職との対話的なやり取りが特に高く評価されました。

社会的意義と実装可能性

本研究は、慢性の虚血性心疾患という専門的な管理を要する領域において、mHealthベースの疾病管理プログラムが高い継続率と満足度をもって実施可能であり、LDLコレステロールをはじめとする心血管リスク因子の改善に初期的な効果を示すことを、実社会のデータで明らかにした点で意義があります。スマートフォンが広く普及した日本では、こうしたmHealth介入は導入しやすく、IHDの維持期の管理を支える新たな選択肢となりうると考えられます。

実装の観点からは、コーチが定期的にチャットや電話でフィードバックを行う対話的な仕組みが、高い継続率と成果に寄与したと考えられます。これは、デジタルツールを使うこと自体ではなく、医療専門職による適切なフィードバックを統合することが鍵であることを示唆しています。また、ベースラインのLDLコレステロールが高い方ほど効果が大きかったことから、リスクの高い層に的を絞った介入が特に有効である可能性があります。

一方で、本研究は対照群のない観察研究であり、対面診療と比べてより効果的かどうかを結論づけることはできません。介入担当者による提供のばらつき、対象が主に就労者であったこと、スタチンなどの服薬状況の詳細を把握できなかったこと、一部が自己報告データであることといった限界もあります。今後は、無作為化比較試験やバイアスを抑えた研究デザインによる検証、および多様な対象者への適用可能性の検討が求められます。

MyStar(マイスター)について

株式会社PREVENTは、生活習慣病を治療している方々の重症化や再発を防ぐための、オンライン完結型の生活習慣改善支援プログラム「MyStar(マイスター)」を提供しています。高血圧・糖尿病・脂質異常症・脳血管疾患・虚血性心疾患などを対象に、専用アプリとモニタリング機器を用いて脈拍・歩数・睡眠・塩分摂取量などのライフログを可視化し、心臓リハビリテーション指導士や糖尿病療養指導士など専門性の高いスタッフが2週間に1回の電話面談を通じて一人ひとりに寄り添った個別サポートを行います。健康保険組合の組合員・企業の従業員の健康づくりを支援し、重篤な疾病を未然に防ぐことで、医療費の適正化と健康経営に貢献します。これまでに約200組合に導入され、10,000名以上にサービスを提供しています。詳細:https://prevent.co.jp/mystar/

株式会社PREVENTについて

2016年7月設立の名古屋大学医学部発スタートアップ企業。企業健保・自治体国保に向けて、保健事業の計画立案や生活習慣病重症化予防事業の提供、保健事業の事業評価などを推進。また、保険者支援の事業を通じて培った「データ解析力」、「RWD」、「各種ソリューション」等のアセットを活用し、製薬業界に関わるステークホルダーへの支援を推進している。大学発スタートアップとしてデータや研究ノウハウを活用したデータ駆動型の事業に強みを持つ。

PREVENT Insight Labについて

PREVENTのビジョン、「科学と社会実践の融合」を具現化するために立ち上げられた研究部門であるInsight Labは、最新の科学的成果を社会に適用し、研究成果の社会への実装を通じて社会問題の解決に貢献することを目標としています。健康関連を含む多岐にわたる分野での研究プロジェクトを進行させ、理論から実践への架け橋となる役割を担っています。

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